何かが漂っている
それは陰のようだった。
陰は、形になろうとしているようだった。
うごめいて、よじって、まわって
線がまわりをなぞる一歩手前になり、散った。
何もみえなくなった。
いなくなった……わけではない。
しばらくして、再び何かが形をめざしてうごき始めた。
それは光だった。
不規則な運動はやがて、光の中央を生み出し、そこを起点として回転し始めた。
そのとき、黒い世界がまわりを覆い尽くしていたことに気づいた。
その黒の一部をよく見てみると、さまざまな色が混濁しているだけのようだった。
黒は、どこにもなかった。
世界は、光とまざって、灰色になった。